リーダーシップ現象研究の紹介 その1『特性論』

先週『リーダーシップの変遷』として、リーダーシップがどのような流れで発展進化を遂げてきたのかについて紹介しました(『リーダーシップの変遷』記事はこちら:http://learnaboutleadership.com/2016/03/21/changesinleadership/)今回はリーダーシップ現象研究の始まりとも言える『特性論』にフォーカスし、リーダーシップ現象研究が『特性論』としてどのように整理されていったのか、また『特性論』に分類させる諸理論と、それら理論が現代のリーダーシップ現象研究とどのようにつながり、影響しているのかについて紹介します。

 

『特性論』とは?

 『特性論』とは、1950年頃まで主流とされたリーダーシップ現象研究です。「優れた資質を持ち合わせた偉人こそがリーダーと成り得る」「リーダーは作られるものではなく、生まれながら持つ特質である」という考え方で、生来的な特性、資質などの観点からリーダーの要件を調査したものです。

 

『特性論』の歴史と代表論

 歴史を遡っていくと紀元前375年プラトンの国家論に『特性論』のようなリーダーついての考え、「英知を持ったリーダーが国を治めよ」(哲人理論)を見つけることができます。また、君主論にてマキャベリが論じた「権謀術数に長けたリーダー像が望ましい」も『特性論』の考え方です。

 

『特性論』におけるリーダーの資質についての研究として代表的なものには、1930年代の『ストッグディルの特性論』があります。アメリカの心理学者であった彼は、リーダーのもつ特性、あるいはリーダーシップと高い相関関係がある特性として、「公正」「正直」「誠実」「思慮深さ」「公平」「機敏」「独創性」「忍耐」「自信」「攻撃性」「適応性」「ユーモアの感覚」「社交性」「頼もしさ」をあげていますが、それぞれの特性の定義、測定、因果関係ははっきりせず、どれもリーダーとして成功するための必然的資質を発見するまでには至っていません。事実後年ストッグディル自身も『特性論』の限界を自ら宣言しています。

 

『特性論』と今

 現在、『特性論』のみでリーダーシップを語る研究者はいません。しかし、現代においても多くの人の認識として「カリスマ的な資質を持った人間が取るものである」というある種『特性論』のような考え方は根強く残っています。また、近年カリスマ型リーダーシップなどに関連し再度リーダーの特性に注目が集まっていることからも、『特性論』が全く価値を失ったのではないとする考えがあることも事実です。

 

今回はリーダーシップの変遷から『特性論』を紹介しました。次回は現在リーダーシップを私たちが学ぶことにできるようになった理由とも言える『行動論』について紹介します。

 

当記事執筆担当:曽我部

 

■参考文献、サイト

【国内記事】今週のリーダーシップニュース (2016/3/19~3/25)

weeklyleadershipnews

国内で気になった記事を紹介します。

今週のリーダーシップニュース:

 

1.「戦後最大の入試改革が、「意欲」と「個性」あふれる人材を社会に送り出す?」

2020年に訪れるのは、東京オリンピックだけでなく、センター試験の廃止。記事では、センター試験という知識量のみを問う入試形態が故に高校までにおいてなかなか企業が求める人材の育成に着手することができなかったため、ついに国としても入試にメスを入れることが述べられています。企業が求めるコミュニケーション能力、主体性、チャレンジ精神と似た観点である、国が掲げる思考力、判断力、表現力と、主体的な学習態度が計れる入試へと切り替わる予定です。

 

2.「子どもの主体性を引き出すには、どうすればいいか?」

人を育てる際に最も重要なのが、主体性、自主性であり、これを引きだすことが子育てにおいても、ビジネスにおいても重要だと述べられています。”自分にとって何が大切で、自分は何が好きなのかを常に問い続ける”ことが、主体性を育むのに役立ち、更に具体的なコーチング方法も記事で伝えています。

 

3.「厳禁!初対面の印象を悪くする「NG言動」」

表題と主題からははずれてしまうのですが、飛行機のキャビンアテンダントは、整備士と違い、毎回初対面同士がチームを組み、業務を行うそうです。記事では初対面同士の仕事において成果をあげるためには、”安全にお客様を目的地までお届けする”という目標共有をしっかり行うことが重要だと述べています。

 

4.「「魔の18か月」を乗り越える強いリーダーシップ」

多くの企業において、イノベーションが重要であると捉えながらも、不足していると感じているのではないだろうか。記事では、イノベーションも重要だが、飛び抜けて大胆なアイディアを考えることよりも、18ヶ月以内に何かしらの成果が出せる実用最小限の製品開発が合理的で、社内においてイノベーションを発揮するには、反対をおしのける等、リーダーシップが必要だと述べています。

 

今週の【国内記事】リーダーシップニュースは以上です。

記事執筆担当:菱山

【海外記事】今週のリーダーシップニュース (2016/3/19~3/25)

weeklyleadershipnews

早速海外記事の中から気になったニュースを紹介します。

今週のリーダーシップニュース:

 

1.「世界のリーダーがリーダーシップコンピテンシーをランキング」
“The Most Important Leadership Competencies, According to Leaders Around the World”
15カ国、195名のリーダーに聞いた、効果的なリーダーシップコンピテンシーを5つ紹介しています。
1.倫理観が高く、期待値を正確に伝える
2.指示や目標が細かすぎない
3.コミュニケーションを通じた一体感の創生
4.新しいアイディアに寛容で、失敗を許す
5.部下の成長を促す
この5つが挙げられています。記事ではより詳しい解説や適応方法が紹介されています。

 

2.「なぜリーダーシップ開発は職場で行われないといけないのか」
“Why Leadership Development Has to Happen on the Job”
ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、研修などではなく、実際の職場でのリーダーシップ開発の必要性が述べられています。近年は、家で作業をする人が増えるなど、職場環境も多岐に渡り、それに応じてリーダーシップの発揮方法も決まった環境を想定した研修等ではなく、実際の職場で実践を通じて養い続ける必要があるとのことです。

 

3.「リーダーよ、成功を信頼で勝ち取れ」
“Leaders, Build Your Success on Trust”
リーダーシップには様々な要素があり、複雑と捉えられがちですが、一つだけ不可欠なものがあるとすれば、それは”信頼”ではないかと述べています。信頼を勝ち取る行動を、ABCDの頭文字で表しています。
Able: 職務を全うする能力を要している
Believable: 行動規範があり、ウソをつかない
Connected: 部下や組織に関心を持ち、精神的につながっている
Dependable: 約束や決めたことを守る
記事では、信頼がもたらす数値的インパクトについても紹介しています。

 

4.「子育ての意識がリーダーシップを教えてくれる」
“What Good Parenting Can Teach Us About Great Leadership”
子育てをしている際に無意識的にしている行動の多くがリーダーシップにも関わりがあり、それを理解し、職場に転用することで、素晴らしいリーダーになれると記事では述べられています。具体的には、子供はいきなり自立して歩くわけではなく、何度も前向きな失敗をすることで、少しずつ歩けるようになる、といった具体的な例を紹介し、リーダーシップに必要な3つの意識を伝えています。

 

5.「Appleの新製品発表が物語るティム・クックのリーダーシップ」
“What Apple product launches say about Tim Cook’s leadership”
新端末iPhone SEが発表されたキーノートでは、スティーブ・ジョブズの頃では考えられなかった最初の25分程を、FBIとのiPhone認証解除の訴訟と、Appleが使う電気の大半が再生可能エネルギーになったことを伝えました。ティム・クックのAppleでは目を奪う新製品発表も大事にしながら、Appleほどの企業が担う社会的責任の大きさと影響を理解し、企業の模範となるような企業文化を意識しているようです。

 

6.「30代社員は意外な理由で退職していく」
“30-something employees probably aren’t leaving your company for the reasons you think”
転職と聞くと、理由として男性は給料を求め、女性はワークライフバランスを求めると短絡的に考えてしまいがちですが、実は女性のほうが給料を求める傾向が高く、男性は成長機会を求めて転職していくことが明らかになったと記事では伝えられています。

 

7.「出世に影響するメンターとは」
“A leadership coach says there’s one type of mentoring relationship that could help you rise faster in your career”
成功・出世しているリーダーには、同程度の職位につくメンターがいる傾向があり、職位が近いことで、お互いにアドバイスや適切なフィードバックを行うことで、相互成長につながっていると記事で述べています。

今週の【海外記事】リーダーシップニュースは以上です。

当記事執筆担当:菱山

Learn About Leadership設立の経緯と今後の投稿予定

なぜLearn About Leadershipというブログを始めたのか、そして今後どのような記事を投稿していく予定かお伝えします。

 

Learn About Leadershipは、株式会社イノベストが運営しています。イノベストは、2011年に創業した教育機関の運営支援を行う会社です。現在は、大学や高校などにおける世界標準のリーダーシップ(権限がなくても発揮すべき誰しもが体得可能な態度スキル)教育科目の導入・運営支援として、①LA(Learning Assistant)制度構築支援事業とPBL(Project Based Learning)の連携者であるクライアント企業等を見つけ、コーディネートする②社会連携支援事業を行っています。2事業の詳細については弊社コーポレートサイトブログにて情報配信しています。

 

なぜこのブログをはじめたのか

 我々が大学・高校の支援業務を行っていく中で、リーダーシップについての事例や研究、その他関連する情報について整理・更新しているサイトやブログがなかなか存在せず、様々な発信者の個人ブログやニュース連載記事、書物などから断片的に情報を整理し、理解するしかありませんでした。

 そこで、リーダーシップに関連する国内外のニュースや最新の論文(当然に海外を含む)等を定期的にまとめて発信すれば、我々が活用できるデータ・ソースが生まれるだけでなく、リーダーシップに関心のある方々にとっても何らかの発見が得られる媒体としてご活用いただけるのではないかと考え、Learn About Leadershipブログを開設することにしました。

 

どのような内容を投稿するのか

 投稿内容は、海外英語文献のリーダーシップ記事紹介、日本のリーダーシップ記事紹介、リーダーシップに関わる論文紹介、リーダーシップ研究者からの寄稿記事、リーダーシップに関わる弊社研究情報紹介です。

 

どのようなリーダーシップを扱うか

 リーダーシップの考え方や模範的な志向・行動は、時代・文化・環境等、様々な要因に応じて変化するため、唯一解がありません。したがって、特定のリーダーシップの考え方に固執せず、幅広く様々な情報を発信していきます。

 

ブログの運営方針

 このブログは特定のリーダーシップの考え方や、会社・人事制度等を宣伝するための媒体ではありません。したがって、極力公平な立場・視点で、リーダーシップに関わる情報をお伝えします。

 

当記事執筆担当:菱山

時代に応じたリーダーシップ理論の変遷について

リーダーシップ年表

近頃よく耳にする“リーダーシップ”という言葉。今回はこのリーダーシップがどのような流れで発展進化を遂げてきたのかについてお話します。リーダーシップの変遷を見ていくと『特性論』『行動論』『条件適応論』『カリスマ型/変革型』『多様な理論の出現』の6つの流れを見て取ることができます。

 

リーダーシップ論の変容とその時代背景

リーダーシップの考え方として1950年代頃まで主流であったのは、『特性論』です。『特性論』とは、優れた資質を持ち合わせた偉人こそがリーダーと成り得る、リーダーは作られるものではなく生まれながら持つ特質である、という考え方です。

 

その考えを打ち破る形で1940年代頃から出てきた『行動論』。リーダーシップは行動であり技術である。したがって習得できるという考え方です。これにより今日のようにリーダーシップを研修などで学ぶようになりました。

 

ここまでのリーダーシップ論はあくまでリーダーの行動特性のみに注目していましたが、1960年代頃より『条件適応論』と呼ばれる、リーダーシップは状況に応じて取るべきスタイルが異なるという考えが登場しました。『行動論』でとらえたリーダーが組織を牽引したからといって、必ずしも好業績を残すわけではない。であるならば、リーダーシップを解明するにはリーダーの行動特性だけでなく、何らかの追加条件が必要なのではないかと研究者の間で考え始められたのです。

 

1980年代1990年代より『カリスマ型、変革型リーダーシップ』の考え方が登場しました。リーダーシップとは組織の変革を促すためにカリスマ的行動をとること、ビジョンを示し目標を達成していくことであると考えられました。『カリスマ型、変革型リーダーシップ』が登場した背景には、将来のビジョンを描いて部下を牽引するマネジメントが求められるようになったことが挙げられます。なぜなら、経済の停滞によって競争環境が激変、既成ルーティン通りに部下をマネジメントするだけでは満足な業績が出せなくなったからです。

 

2000年頃から変革型をベースとしつつ、リーダーとフォロワーとの関係性を重視する考え方が広まり、そこから発展していく考え方として『多様な理論の出現』が見受けられます。これは1990年代半ば以降に広がった、リソース・ベースド・ビューやコア・コンピタンスの中でも「人」と「組織文化」に帰着する強さこそが最も模倣困難なものであるという認識が影響しているといえるのではないでしょうか。

 

 

今回はざっくりとリーダーシップの変遷について紹介致しましたが、次週からは各論について、そこに含まれる論文や理論などを紹介していきます。

 

画像のPDF版はこちら:リーダーシップ年表

 

当記事執筆担当:曽我部

 

■参考文献、サイト

 

■編集履歴

年表のサーバントリーダーシップが発表された年次に誤りが有りましたので訂正しました。(2016.4.23)