リーダーシップ現象研究 その5『2000年頃からのリーダーシップ現象研究』

前回はリーダーシップの変遷から『カリスマ的/変革型リーダーシップ』を紹介しました。(リーダーシップ現象研究 その4『カリスマ的/変革型リーダーシップ』はこちら:http://learnaboutleadership.com/2016/04/18/charismatic-transformational/)2000年頃からのリーダーシップ現象研究は、複雑化する社会と共に多様な展開を遂げてきました。今回はリーダーシップ現象研究の紹介その5ということで、その多様に展開するリーダーシップ現象研究の中から、メジャーな4つの現象研究をピックアップし、ご紹介します。

 

 

『サーバント・リーダーシップ』とは?

 『サーバント・リーダーシップ』は1970年代にロバート・K・グリーンリーフが提唱した理論です。近年この理論が再び注目されている背景には、社会的不安や腐敗から、

リーダーに倫理的な信頼感を求めたいという風潮が高まったことが挙げられています。桜美林大学大学院、博士後期課程の劉 炳燮さんは、自らの論文で『サーバント・リーダーシップ』は、リーダーである人はまず相手に奉仕しその後、相手を導くものである、というリーダーシップ哲学で、リーダーシップを「やり方」というスキルではなく、組織 内の人と人との信頼関係に基づくリーダーシップの「あり方」、リーダーたる者の「人間力」に焦点をあてた理論(経営哲学)であると論じています。

 

 

『シェアード・リーダーシップ』とは?

 『シェアード・リーダーシップ』とは、各人に権限を与え、それぞれの専門分野でリーダーとしての役割を担う機会を提供することで組織内のすべての人材の能力を最大限に引き出すことです。グローバル市場の拡大、業界再編、相次ぐ組織の合併といった動きが活発化し、これまで以上にダイナミックな柔軟性や幅広い知識ベースとノウハウが求められる中で、その複雑なニーズに対するソリューションのひとつとされています。なお、考え方としては昔からあるとも言われます。David Sally(2002)の研究によると、ローマ共和国が4世紀続いた背景にはco-leadership(シェアード・リーダーシップの類義語)が根付いていたことが関係するとされています。

 

 

『EQリーダーシップ』とは?

EQ(Emotional Intelligence Quotient、心の知能指数)を提唱した、ダニエル・ゴールマンが論じたリーダーシップ現象研究です。彼はEQと企業の業績の相関関係を突き止め、EQとリーダーシップとの相関関係を確認しました。彼は、リーダーシップには異なる6つのスタイル;強圧型リーダー、権威主義型リーダー、親和型リーダー、民主主義型リーダー、先導型リーダー、コーチ型リーダーが有り、そのそれぞれが異なる「こころの知能指数」(EQ)を基盤にしているとしました。また、最高の結果を出しているリーダーは一種類のリーダーシップ・スタイルにだけ頼っておらず、状況に応じて6種類のスタイルの大半を絶えず使っているとしています。

 

 

『オーセンティック・リーダーシップ』とは?

 英語のオーセンティックは「真正の」「本物の」「信ずべき」などと和訳され、オーセンティック・リーダーシップも文字どおり「真正のリーダーシップ」と訳されます。2000年代初頭から広く知られるようになった『オーセンティック・リーダーシップ』、提唱者の1人とされるのは、メドトロニック社の元CEO ビル・ジョージです。彼が主張する新しいリーダーの特性には、以下の5つ;自らの目的をしっかり理解している、しっかりした価値観に基づいて行動する、真心を込めてリードする、しっかりした人間関係を築く、しっかり自己を律する、が挙げられています。また、『オーセンティック・リーダーシップ』は発揮する人間が、その私生活も含めた人生の中で自ら高めていくことができるとされており、これもまた1つの特徴とされます。事実、日本でも『オーセンティック・リーダーシップ』を育成する研修が多く行われています。

 

 

5週間にわたって様々なリーダーシップ現象研究を紹介し、今週は最近注目されている4つのリーダーシップ現象研究を紹介しました。近年はこの他にも、たくさんの新たなリーダーシップ現象研究が研究・発表されています。これは複雑化する社会の中で多様なリーダーシップが求められていることが大きな要因と言えるでしょう。言い換えるなら、求められるリーダーシップを考えることで、社会の流れを考えることにも繋がるということではないでしょうか。Learn About Leadershipでは、国内外のリーダーシップに関するニュースまとめも発信しているので、ニュースをフォローしつつ、リーダーシップから社会の流れを考えるのも面白いかもしれません。

 

 

■参考文献、サイト

  • “サーバントリーダーシップとは”, NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会, http://www.servantleader.jp/about_greenleaf.html, (参照 2016-4-24)
  • 劉 炳燮, “サーバント・リーダーシップの諸理論と事例研究”, http://www.ibunkakeiei.com/s-board/data/f114_00.pdf, (参照 2016-4-27)
  • Marshall Goldsmith,“リーダーシップの共有が組織と人を強くする”, Harvard Business Review, http://www.dhbr.net/articles/-/2131, (参照 2016-4-24)
  • Michael D. Kocolowski, “Shared Leadership: Is it Time for a Change?”, 『EMEGENCY LEADERSHIP JOURNEYS』, 3 Iss. 1, 2010, pp. 22-32, 2010, http://www.regent.edu/acad/global/publications/elj/vol3iss1/Kocolowski_ELJV3I1_pp22-32.pdf, (参照 2016-4-27)
  • “EQリーダーシップ 成功する人の「心の知能指数」”, https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&ved=0ahUKEwjlk77fwajMAhXGjJQKHdDlDkgQFggoMAE&url=http%3A%2F%2Fwww.ki-dousen.net%2Fdocs%2Fcontent%2F1240&usg=AFQjCNGGxUeRcmlVXu_tT5Lm4Uz5t_FYog&sig2=uKjhtWMLM_1HvaC-XW1zVw, (参照 2016-4-24)
  • “「EQリーダーシップ」を読んで” https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=4&ved=0ahUKEwjlk77fwajMAhXGjJQKHdDlDkgQFgg0MAM&url=http%3A%2F%2Fmike-shimada.blog.so-net.ne.jp%2F2012-02-03-1&usg=AFQjCNEyes-q076_1G6kKTbmA5sRYTQcDw&sig2=HbYJPHaKKGgiN8hMngV7vQ, (参照 2016-4-24)
  • “MBA経営辞書「オーセンティック・リーダーシップ」”, GLOBIS知見録, http://globis.jp/article/2062, (参照 2016-4-24)
  • グロービス経営大学院『新版MBAリーダーシップ』, ダイヤモンド社, https://books.google.co.jp/books?id=ViFlAwAAQBAJ&pg=PT81&lpg=PT81&dq=オーセンティックリーダーシップ&source=bl&ots=K0cKtwgI-3&sig=fIi-f9bvaBmMWAj8nJbviinFqKY&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjzv9_PkKfMAhXCIKYKHRNzAZMQ6AEIWjAJ#v=onepage&q=オーセンティックリーダーシップ&f=false, (参照 2016-4-24)

 

 

 

リーダーシップ現象研究の紹介 その4『カリスマ的リーダーシップ/変革型リーダーシップ』

先週はリーダーシップ現象研究の1つとして『条件適応論』を紹介しました(リーダーシップ現象研究 その3『条件適応論』はこちら:http://learnaboutleadership.com/2016/04/11/contingencytheory/)今回は、リーダーシップ現象研究の紹介その4ということで『カリスマ的リーダーシップ/変革型リーダーシップ』とそれに分類させる諸理論について紹介します。

 

 

『カリスマ的リーダーシップ』とは?

 カリスマ的リーダーシップは、1970年代後半から提唱され始めたリーダーシップ現象研究です。ここで使われる “カリスマ”とは、生まれつきの資質という考え方ではありません。諸説あり、まだ完全に整理されていませんが、カリスマ的リーダーシップとは、「部下にカリスマと認知されることで、リーダーはカリスマとなりうる」という理論です。

1942年に社会学者マックスウェイバーに定義づけられたものが、ハウスによって1976年に再定義されました。ハウスの再定義とは、先天的な特性ではなく、「部下にカリスマと認知されることで、リーダーはカリスマとなりうる」「きわめて高水準の自己信頼と部下からの信頼があることで、リーダーは部下を目標に導くことが可能である」というものでした。つまり、個人の資質として捉えられてきたカリスマの概念を、リーダーがフォロワーに変化をもたらす効果に着目して再定義したということです。この考え方はカリスマ的、変革型リーダーシップ論においてとても重要視される考え方です。

その後コンガーとカヌンゴが、部下からの認知という視点から「具体的にどんな行動を取れば、リーダーはカリスマと認知されるのか」を研究しました。その結果、①戦略ビジョンの提示 ②リーダー自らリスクを取り、部下の規範となる行動を取ること ③現状の正しい評価 の3点を行うことによって、カリスマと認知されうると主張しました。なお、現在に至ってもカリスマ性の内容については議論が続いています。

 

 

『変革型リーダーシップ』とは?

 変革型リーダーシップは、1980年代頃から提唱され始めたリーダーシップ現象研究です。前述した『カリスマ的リーダーシップ』と似ていますが、「組織の変革を実現するためのビジョンを持つ者がリーダーである」という考えのもと成り立ている理論です。

変革型リーダーシップには、に分類されるリーダーシップ現象研究は様々ありますが、今回は、コッターのリーダーシップ論とティシーの現状変革型リーダー論について紹介します。

 

コッターのリーダーシップ論

リーダーシップとマネジメントの違いについて主張、変革の時代に必要なものはリーダーシップである点が強調されています。コッターは、リーダーシップにおける最も重要な要素を「リーダーの掲げるビジョン」であるとし、変革を実現する為の変革の8段階を提唱しました。更にリーダーの特性やスキルにも焦点を当て、リーダーに必須の能力として「対人態度」と「高いエネルギーレベル」を挙げました。その「対人態度」「高いエネルギーレベル」というリーダーとしての能力は、子供時代、仕事の経験、所属した組織の文化などに大きく影響されると説明しています。

 

ティシーの現状変革型リーダー論

この理論では、日常の反復業務やルール通りの管理に長けた「マネジャー」ではなく、変革を実行する「リーダー」のあり方が明確に定義されています。リーダーがビジョンを提示し、それを実行させるべくメンバーに働きかける、という点も含めコッターのリーダーシップ論と同様です。「リーダーシップ・エンジン」という新たな概念;リーダーは組織のあらゆる階層に存在し、リーダー自らが次世代のリーダーを生み出していく仕組みづくりが大切である、を提唱しました。ティシーの現状変革型リーダー論、リーダーシップ・エンジンの概念は、彼がクロトンビル(世界初の企業内ビジネススクールで、先進的なリーダーシップトレーニングで有名な1956年に誕生したクロトンビルの研修所)で所長を務めていたということも関係して、GEやジャック・ウェルチの考えるリーダーシップ教育のあり方にも大きな影響を与えています。

 

 

今回はリーダーシップの変遷から『カリスマ的/変革型リーダーシップ』を紹介しました。次回は、近年注目されている最新のリーダーシップ現象研究を幾つかピックアップして紹介します。

 

当記事執筆担当:曽我部

 

 

■参考文献、サイト

  • “カリスマ的リーダーシップ理論”, INVENIO LEADERSHIP INSIGHT, http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/theory_of_charismatic_leadersh.html, (参照 2016-4-17)
  • 小野善生,“フォロワーの視点から見たカリスマ的・変革型リーダーシップ”, 『関西大学商学論集』第58巻第4号, 2014, http://kuir.jm.kansai-u.ac.jp/dspace/bitstream/10112/8169/1/KU-1100-20140210-03.pdf, (参照 2016-4-17)
  • “変革的リーダーシップ理論”, INVENIO LEADERSHIP INSIGHT, http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/transf_leadership.html, (参照 2016-4-17)
  • “変革リーダーシップ”, GLOBIS MANEGEMENT SCHOOL, http://gms.globis.co.jp/dic/00926.php, (参照 2016-4-17)
  • “コッターのリーダーシップ論”, INVENIO LEADERSHIP INSIGHT, http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/kotters_leadership_theory.html, (参照 2016-4-17)
  • “ティシーの現状変革型リーダー論”, INVENIO LEADERSHIP INSIGHT, http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/transformational_leader.html, (参照 2016-4-17)

リーダーシップ現象研究 その3『条件適応論』

先週はリーダーシップ現象研究の1つとして『行動論』を紹介しました(リーダーシップ現象研究 その2『行動論』はこちら:http://learnaboutleadership.com/2016/04/04/actiontheory/)今回は、リーダーシップ現象研究の紹介その3ということで『条件適応論』がどのように研究され整理されていったのか、また『条件適応論』に分類される諸理論と、それら理論が現代のリーダーシップ現象研究とどのようにつながり、影響しているのかについて紹介します。

 

 

『条件適応論』とは?

 1960年代終わり頃から発展してきたリーダーシップ現象研究で、リーダーシップは状況に応じて取るべきスタイルが異なるという理論です。「全ての状況に適応されうる唯一最善の普遍的なリーダーシップ・スタイルは存在しない」という考えのもとに成り立っているため、『特性論』や『行動論』とは異なり、リーダーの行動特性だけでなく何らかの追加条件も研究すべきという仮説に基づいています。

 

 

『条件適応論』の代表的な理論

 全ての状況に適応されうる唯一最善の普遍的なリーダーシップ・スタイルは存在しない、という考えに基づき、リーダーの特性や行動と状況の関係を明らかにしようとした『条件適応論』。今回はその中から2つ、ハウスの『パス・ゴール理論』とP・ハーシーとK・H・ブランチャードの『SL理論』を紹介します。

 

『パス・ゴール理論』/ハウス

1971年にオハイオ州立大学の研究の流れをくむハウスらが提唱した条件適応論。まず、リーダーシップの有効性を「リーダーのとる行動によって、部下が動機づけられるかどうかによる」とし、部下が動機づけられるには「リーダーが、部下がうまく目的・成果(ゴール)に到達するためにはどのような道(パス)をたどれば良いのかを把握した上で、有効な働きかけをすることが必要」としました。また、リーダーが達成したいゴールに向け、部下に有効なパス(道筋)を示す際には、2つの条件(「環境的な条件」と「部下の個人的な特性」)を念頭に置かなければならないとしています。この2つの条件の組み合わせにより、そのときに有効となるリーダー行動を指示型・支援型・達成型・参加型の4つに分類しました。

 

SL理論』/P・ハーシーとKH・ブランチャード

SLはSituational Leadership の略で、1977年にP・ハーシーとK・H・ブランチャードが提唱した条件適応論です。有効なリーダーシップスタイルは部下の成熟度で異なるとし、業務指示の必要性とそれを支援するコミュニケーションの必要性の2つの要素によってリーダーシップが変わると捉えています。まず、仕事志向(指示的行動をとる)と人間志向(共労的行動をとる)の2軸で4象限に分け、それぞれの状況でリーダーシップの有効性を高めるにはどうすべきかを示しました。部下の成熟度が低い順に、有効なリーダーシップは次のように規定されるとしています;教示的リーダーシップ→説得的リーダーシップ→参加的リーダーシップ→委任的リーダーシップ。

 

 

『条件適応論』と今

 『条件適応論』は、マネジリアル・グリッド理論、PM理論などの『行動論』で捉えたリーダーたちが組織を牽引しても、必ずしも好業績を残すわけではない、とされたことから研究が始まりました。『条件適応論』が主流となってから現代においてもなお、新たに研究、提唱されるリーダーシップ現象研究のほとんどが条件適応論を基本にしていると言われています。

 

 

今回はリーダーシップの変遷から『条件適応論』を紹介しました。次回は『カリスマ型・変革型リーダーシップ』について紹介します。

 

当記事執筆担当:曽我部

 

■参考文献、サイト

  • “リーダーシップ条件適応論”, INVENIO LEADERSHIP INSIGHT, http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/contingency_theory.html, (参照 2016-4-10)
  • “コンティンジェンシー理論”, Camp Network, http://capm-network.com/?tag=コンティンジェンシー理論
  • “パス・ゴール理論: 状況に合わせて、部下を動機づける行動をとるべし”, GLOBIS 知見録, http://globis.jp/article/2237, (参照 2016-4-10)
  • “パス・ゴール理論”, INVENIO LEADERSHIP INSIGHT, http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/pathgoal_theory_of_leadership.html, (参照 2016-4-10)
  • “SL理論”, INVENIO LEADERSHIP INSIGHT, http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/slsituational_leadership_theor.html, (参照 2016-4-10)
  • 藤田聰, “リーダーシップは部下の習熟度で変化させる”, All About, http://allabout.co.jp/gm/gc/313285/ (参照 2016-4-10)

リーダーシップ現象研究の紹介 その2

先週はリーダーシップ現象研究の1つとして『特性論』を紹介しました(リーダーシップ現象研究 その1『特性論』はこちら:http://learnaboutleadership.com/2016/03/28/traittheory/)今回は『特性論』を打ち破る形で登場した『行動論』にフォーカスし、リーダーシップ現象研究がどのように『行動論』として整理されていったのか、また『行動論』に分類される諸理論が現代のリーダーシップ現象研究とどのようにつながり、影響を与えているのかについて紹介します。

 

 

『行動論』とは?

 1940年代頃から始まったリーダーシップ現象研究で、有効なリーダーに共通して見られる「行動パターン」を元にリーダーシップ現象を定義しようとする理論です。『特性論』とは異なり「リーダーとは作られるものである」という前提を持ち、リーダーとそうでない行動の違いに着目しています。また、リーダーシップとは「行動であり技術である。したがって習得できる」と始めて提唱した研究です。

 

 

『行動論』の代表的な諸理論

 『行動論』について多くの研究者が様々な現象研究を行っています。例えば、シャートルの『オハイオ研究』、レヴィンの『リーダーシップ類型』、リッカートの『マネジメント・システム論』、ブレイク、ムートンの『マネジアル・グリッド論』、三隅二不二の『PM理論』などが挙げられます。これらの多くに共通しているのは、リーダーシップの機能を課題達成(Task)機能と、人間関係(Relation)の2つの機能で説明していることです。今回はブレイク、ムートンの『マネジリアル・グリッド論』と三隅二不二の『PM理論』について詳しく紹介します。

 

マネジリアル・グリッド論』/ブレイク、ムートン

1964年にブレイク(R.R.Blake)とムートン(J.S.Mouton)によって提唱された行動論です。リーダーシップの行動スタイルを「人間に対する関心」「業績に対する関心」という2軸で捉え、それぞれの軸を9段階に分けています。ここに出来る計81の格子(グリッド)をマネジメント・グリッドと称し、典型的なリーダーシップ類型を5つ(1・1型、1・9型、9・1型、9・9型、5・5型)分類しました。ブレイクとムートンは、この類型の中では9・9型が最も理想的なリーダー類型であると主張しています。

 

PM理論』/三隅二不二

1966年に日本の社会心理学者、三隅二不二(みすみ じゅうじ)が提唱した行動論で、リーダーシップは2つの能力要素(「目標達成能力」P:Performanceと「集団維持能力」M:Maintenance)で構成されるという考えです。目標設定や計画立案、メンバーへの指示などにより目標を達成する能力(P)と、メンバー間の人間関係を良好に保ち、集団のまとまりを維持する能力(M)の2つの能力の大小によって、リーダーシップタイプを4つ(PM型、Pm型、pM型、pm型)に分類しました。望ましいリーダーシップタイプは、PとMが共に高い状態(PM型)とされています。

 

 

『行動論』と今

 『行動論』が生まれた背景には、1940年代後半戦後のアメリカにおいて多数のリーダーを発掘・育成する必要が出てきたことにあります。前述したように、多くの研究者が「リーダーとは作られるものである」という前提に立ち、どのような行動が有効なリーダーを作り上げるのかを研究しました。その歴史があったからこそ、今日のようにリーダーシップを研修等で学ぶことができるようになったのだと言われています。

 

 

今回はリーダーシップの変遷から『行動論』を紹介しました。次回はリーダーシップを解明するには行動特性だけでなく、何か別の追加条件が必要なのではないかという考えから生まれた『条件適応論』について紹介します。

 

 

■参考文献、サイト

  • “リーダーシップ行動論/機能・職能論”, INVENIO LEADERSHIP INSIGHT, http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/behavioral_theory.html, (参照 2016-3-)
  • “行動理論”, GLOBIS MANEGEMENT SCHOOL,, http://gms.globis.co.jp/dic/00616.php, (参照 2016-3-)
  • “マネジリアル・グリッド論”, INVENIO LEADERSHIP INSIGHT, http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/the_managerial_gridmodel.html, (参照 2016-3-)
  • “マネジリアル・グリッド論”, GLOBIS MANEGEMENT SCHOOL, http://gms.globis.co.jp/dic/00320.php, (参照 2016-3-)
  • “PM理論”, INVENIO LEADERSHIP INSIGHT, http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/pm_theory_of_leadership.html, (参照 2016-3-)
  • “PM理論”, GLOBIS MANEGEMENT SCHOOL, http://gms.globis.co.jp/dic/01045.php, (参照 2016-3-)

リーダーシップ現象研究の紹介 その1『特性論』

先週『リーダーシップの変遷』として、リーダーシップがどのような流れで発展進化を遂げてきたのかについて紹介しました(『リーダーシップの変遷』記事はこちら:http://learnaboutleadership.com/2016/03/21/changesinleadership/)今回はリーダーシップ現象研究の始まりとも言える『特性論』にフォーカスし、リーダーシップ現象研究が『特性論』としてどのように整理されていったのか、また『特性論』に分類させる諸理論と、それら理論が現代のリーダーシップ現象研究とどのようにつながり、影響しているのかについて紹介します。

 

『特性論』とは?

 『特性論』とは、1950年頃まで主流とされたリーダーシップ現象研究です。「優れた資質を持ち合わせた偉人こそがリーダーと成り得る」「リーダーは作られるものではなく、生まれながら持つ特質である」という考え方で、生来的な特性、資質などの観点からリーダーの要件を調査したものです。

 

『特性論』の歴史と代表論

 歴史を遡っていくと紀元前375年プラトンの国家論に『特性論』のようなリーダーついての考え、「英知を持ったリーダーが国を治めよ」(哲人理論)を見つけることができます。また、君主論にてマキャベリが論じた「権謀術数に長けたリーダー像が望ましい」も『特性論』の考え方です。

 

『特性論』におけるリーダーの資質についての研究として代表的なものには、1930年代の『ストッグディルの特性論』があります。アメリカの心理学者であった彼は、リーダーのもつ特性、あるいはリーダーシップと高い相関関係がある特性として、「公正」「正直」「誠実」「思慮深さ」「公平」「機敏」「独創性」「忍耐」「自信」「攻撃性」「適応性」「ユーモアの感覚」「社交性」「頼もしさ」をあげていますが、それぞれの特性の定義、測定、因果関係ははっきりせず、どれもリーダーとして成功するための必然的資質を発見するまでには至っていません。事実後年ストッグディル自身も『特性論』の限界を自ら宣言しています。

 

『特性論』と今

 現在、『特性論』のみでリーダーシップを語る研究者はいません。しかし、現代においても多くの人の認識として「カリスマ的な資質を持った人間が取るものである」というある種『特性論』のような考え方は根強く残っています。また、近年カリスマ型リーダーシップなどに関連し再度リーダーの特性に注目が集まっていることからも、『特性論』が全く価値を失ったのではないとする考えがあることも事実です。

 

今回はリーダーシップの変遷から『特性論』を紹介しました。次回は現在リーダーシップを私たちが学ぶことにできるようになった理由とも言える『行動論』について紹介します。

 

当記事執筆担当:曽我部

 

■参考文献、サイト